セキュリティ対策 配信中!
【入門解説】SCS評価制度とは?サプライチェーン企業に求められる評価と準備の進め方
公開日:2026.03.11
更新日:2026.03.11
コラム
-
セキュリティ対策
目次
こんにちは。株式会社クオリティアです。
「その取引先のセキュリティ、大丈夫ですか?」
この不安は、いま多くの企業が抱えています。そしてこの課題に対し、国として“共通のものさし”を整備しようとしているのが、経済産業省が検討を進めている「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」です。
本制度は、企業のセキュリティ対策を共通基準で評価し『★』で可視化する仕組みで、今後の取引条件にも影響を与える可能性があります。本記事では、制度の概要、評価の考え方、★3〜★5の違い、2026年3月時点の最新スケジュール、企業が今から準備すべきことまでをわかりやすく解説します。
この制度は何をするもの?
ひと言でいえば、取引先のセキュリティ対策レベルを“見える化”する制度です。
これまで企業は、それぞれ独自の基準で対策を講じ、独自の方法で確認を行ってきました。
その結果、評価基準が統一されず、確認にかかる手間や説明負担が増大するという課題が生じていました。発注側は「本当に十分な対策が取られているのか」と不安を抱え、受注側は「取引先ごとに異なる基準」に対応する負担を強いられていたのが実情です。
こうした“バラバラな基準”の問題を整理するために設けられるのがSCS評価制度です。本制度では、セキュリティ対策を共通の尺度で評価し、その水準を企業間で共有できる状態を目指します。これにより、取引における透明性と信頼性の向上が期待されています。
サプライチェーンとは?多くの企業が関わる“持ち回りの仕組み”
サプライチェーンとは、複数の企業が役割を分担しながら、最終的に商品やサービスを顧客へ届けるまでの一連の流れを指します。製造、物流、販売、ITサービス、システム運用など、さまざまな企業が関わりながら価値が生み出されていきます。この流れの中で役割を担う企業は、まとめて「サプライチェーン企業(サプライヤー企業)」と呼ばれます。
そのため、製造業だけが対象というわけではありません。部品メーカーや物流企業だけでなく、ITベンダー、クラウドサービス事業者、システム開発会社、業務委託先なども、取引の中で重要な役割を担っていればサプライチェーンの一部に含まれます。多くの企業が、何らかの形でサプライチェーン企業に該当する可能性があります。
この仕組みを例えるなら、みんなで一品ずつ担当し、お客様のもとへコース料理を完成させるようなものです。企業同士が連携して価値を積み上げ、その結果として最終的な商品やサービスが提供されます。
しかし、このコース料理のどこか一工程で問題が起きれば、全体の品質に影響します。誰か一人が食中毒を出せば(=サイバー攻撃で侵害されれば)、最後の料理まで台無しになってしまいます。
だからこそサプライチェーンでは、
- 全員が最低限の衛生基準(=セキュリティ対策)を守る
- 重要な工程ほど、より高い基準を満たす
ことが求められます。
では、その「衛生基準」をどのように確認し、一定水準を担保するのか。
そのための仕組みが、SCS評価制度です。
SCS評価制度とは?仕組みをわかりやすく解説
SCS評価制度は、『企業のセキュリティ対策を共通基準で評価し、★で示す仕組み』です。
単なる「ウイルス対策ソフトの有無」を見る制度ではありません。
評価の軸は大きく7つです。
- ガバナンス(経営の関与)
経営層がセキュリティを重要課題として位置づけ、方針や体制を明確にし、継続的に管理・監督している状態を指します。 - リスク特定
自社のシステムや業務のどこに弱点や脅威があるのかを把握し、優先的に対策すべきリスクを明確にすることです。 - 防御
不正アクセスや情報漏えいを防ぐために、技術的・運用的な対策(アクセス制御、パッチ適用など)を実施することです。 - 検知
攻撃や異常が発生した際に、できるだけ早く気づける仕組み(ログ監視やアラートなど)を整えることです。 - 対応
インシデントが発生した場合に、被害の拡大を防ぐための対応手順や体制を整備し、迅速に対処できる状態を確保することです。 - 復旧
システム障害やサイバー攻撃によって業務が停止した場合でも、できるだけ早く業務を回復できるよう、復旧手順やバックアップ体制を整えておくことです。 - 取引先管理
自社だけでなく、委託先やサプライヤーにも適切なセキュリティ対策を求め、継続的に管理・確認することです。
つまり、技術だけでなく「経営管理」が問われる制度なのです。
企業視点で見ると、何が変わる?
では実際に企業の現場では何が変わるのでしょうか?
- 営業現場の変化
発注企業:「御社はSCS評価制度で★何を取得予定ですか?」
受注企業:「★4取得を想定して整備しています」
セキュリティが“抽象論”ではなく、“数値化された説明”に変わります。 - 経営会議の変化
これまで:「セキュリティ強化が必要です」
これから:「取引維持のため★3取得が最低条件です」
抽象的な投資議論から、経営課題へ格上げされます。 - 情報システム部門の変化
これまで:属人的な運用
これから:文書化・記録化・継続改善
“やっている”から“説明できる”へ変わります。
企業としてどの「★○」を取得すべきなのか?
SCS評価制度は★1から始まりません。
既存の「SECURITY ACTION*1」の上位制度として、★3・★4・★5の3段階が想定されています。
多くの企業にとって、まずは★3の取得を目標とすることが現実的です。そのうえで、体制や運用が成熟している企業は★4の取得を目指すという段階的な対応が想定されます。
| 段階 | 位置付け | 求められる状態 |
|---|---|---|
| ★3 | 最低限実装すべきレベル | 基礎的な組織的対策とシステム防御策を中心とした、最低限のセキュリティ対策を実施 |
| ★4 | 標準的に目指すべきレベル | 組織ガバナンス、取引先管理、システム防御・検知、インシデント対応などを含む包括的な対策を実施 |
| ★5 | 高度なレベル | 国際規格などのリスクベースの考え方に基づき、自組織に必要な改善プロセスを整備し、システムはベストプラクティスに基づく対策を実施 |
では、その評価はどのような観点で判断されるのでしょうか。 SCS評価制度では、企業のセキュリティ体制を大きく7つの観点から確認し、その取り組み状況をもとに総合的な評価が行われます。
| 観点 | ★3 | ★4 | ★5 |
|---|---|---|---|
| ガバナンス | 方針・体制が明確 | 経営レビューを実施 | 経営レビューを実施 |
| リスク管理 | 基本的なリスクを把握 | 定期的評価・見直し | 定量分析・高度管理 |
| 防御・検知 | 基本対策を実施 | 基本対策を実施 | 高度な統合監視 |
| 対応・復旧 | 手順がある | 訓練や検証を実施 | 迅速復旧と継続的改善を実践 |
| 取引先管理 | 基本基準を提示 | 基本基準を提示 | リスクに応じた統制を実施 |
| 評価スキーム | 専門家確認付き自己評価 | 第三者評価 | 第三者評価(詳細設計中) |
| 有効期間 | 1年 | 3年 | 未定(詳細設計中) |
※1:SECURITY ACTIONとは?
IPA(情報処理推進機構)が実施している中小企業向けの自己宣言型セキュリティ制度です。企業が自社の情報セキュリティ対策に取り組むことを宣言し、★1(基礎的対策)と★2(継続的な対策)の2段階で取り組み状況を示します。第三者認証ではなく、まずは「できることから始める」ことを目的とした入門的な枠組みです。
現場でよくある誤解
誤解1「IT部門だけの話でしょ?」
違います。評価には「ガバナンス」が含まれ、経営関与が前提です。
誤解2「ウイルス対策ソフトいれているから大丈夫!」
不十分です。「方針はあるか?」「教育は実施しているか?」「記録は残っているか?」が問われます。
誤解3「自己評価なら楽では?」
★3でも専門家確認が想定されています。“形だけ”では通用しません。
いつ始まる?制度スケジュール
経済産業省は、「令和8年度(2026年度)末、すなわち2027年3月頃を想定」と公表しています。
| 時期 | 内容 | 状況 |
|---|---|---|
| 2025年4月 | 中間取りまとめ公表 | 完了 |
| 2025年12月26日 | 制度構築方針(案)公表・意見公募開始 | 完了 |
| 2026年1月24日 | 意見公募締め切り | 完了 |
| 2026年3月(現在) | ★3・★4:制度構築方針公表後、制度詳細設計段階 | 進行中 |
| 2026年4月以降 | ★3・★4:制度詳細設計・運用準備段階 ★5:基準、評価スキームなどの検討 |
今後 |
| 2027年3月頃 | ★3・★4:運用開始を目指す | 今後 |
今はどのフェーズ?企業側の逆算スケジュール(2026年3月起点)
2026年3月時点では、制度設計は最終段階に入っています。方向性はほぼ固まりつつあり、企業側は“様子見”ではなく“準備段階”にあるといえます。制度開始を2027年3月頃と仮定すると、実質的な準備期間は約1年です。
※以下は制度開始を想定した一般的な準備イメージであり、正式な制度運用内容は今後の公表資料や業種業態、現状の対策状況によって変更または前後する可能性があります。詳しくは経済産業省の公式ホームページよりご確認ください。
フェーズ1:2026年3月〜2026年9月
目的:土台構築
-
現状棚卸し
現在どのようなセキュリティ対策を実施しているのかを洗い出し、「できていること」と「不足していること」を整理します。 -
対象範囲明確化
評価の対象となる拠点・システム・クラウド・委託先などを明確にし、どこまでを管理範囲とするのかを決めます。 -
セキュリティ方針策定
経営としてセキュリティにどう取り組むのかを文書化し、基本方針と責任体制を明確にします。 -
役割整理
インシデント対応や管理業務について、誰が何を担当するのかを具体的に定めます。 -
教育実施(記録保存)
従業員向けにセキュリティ教育を行い、実施日や参加者を記録として残します。 -
IT資産管理整備
自社で利用している端末・アカウント・ソフトウェア・クラウドサービスを一覧化し、管理できる状態にします。
まず★3取得を前提とするなら、この半年が最重要期間です。
フェーズ2:2026年10月〜2026年12月
目的:運用の定着と証跡蓄積
-
パッチ管理の実運用
OSやソフトウェアの更新を定期的に実施し、その履歴を記録します。 -
バックアップ確認記録
データのバックアップを実施するだけでなく、復元確認の結果まで記録します。 -
ログ管理の実施
データのバックアップを実施するだけでなく、復元確認の結果まで記録します。 -
委託先管理ルール整備
取引先や委託先に求めるセキュリティ基準を明確にし、確認方法を定めます。
「やっている」から「証明できる」へ。
フェーズ3:2027年1月〜制度開始直前
目的:評価準備
-
★3を想定した自己評価を実施
評価項目に沿って自社の状況をチェックし、不足部分を最終確認します。 -
提出資料整理
規程・記録・台帳など、評価に必要な資料をまとめます。 -
社内説明
経営層や関係部署に評価内容を共有し、認識を統一します。 -
営業・調達部門との連携
「自社は★3相当」と説明できるよう、取引現場での対応方針を整えます。
まとめ
SCS評価制度は、単なる新しい評価制度ではありません。
これは、日本企業が「セキュリティを経営レベルで管理する時代」へ移行するための枠組みです。
サプライチェーンが高度に連携する現代において、セキュリティは一社だけの問題ではありません。取引先の対策状況は、自社の信用や事業継続性に直結します。そのため、これからの企業には「対策をしている」だけでなく、「対策を説明できる」ことが求められるようになります。
今後、一部の企業やそのパートナー企業が、一定水準以上の評価を取引条件とする可能性も十分に考えられます。すぐに一律で「★4以上でなければ取引できない」となるとは限りませんが、重要業種や高リスク領域から段階的に基準が引き上げられていくことは、現実的なシナリオといえるでしょう。
特に★3は実質的な最低基準となる可能性が高く、業種や取引内容によっては★4が標準として求められる場面も想定されます。SCS評価制度は単なる制度対応にとどまらず、今後の取引継続や企業の競争力にも関わる重要なテーマといえます。
また、この制度はセキュリティ対策の評価だけでなく、企業間取引における信頼の基準を可視化する仕組みでもあります。だからこそ、本制度を「負担」と捉えるのではなく、自社のセキュリティ体制を整理し、強化する機会として活用することが重要です。方針を明確にし、運用を整え、記録を残し、継続的に改善する——この基本を着実に積み重ねることが、結果として企業価値の向上につながります。
クオリティアは今後も、サプライチェーン全体の安全性向上に貢献する立場として、企業の皆さまが“説明できる体制”を構築できるよう支援を続けてまいります。
SCS評価制度への対応や体制整備に向けた第一歩として、本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。